星の大地<冴木 忍>

<あらすじ>

レーンドラの王女の突然の自殺、蘇生…だが予見の力も記憶もなくしてしまった…。わがまま王女と世間しらずの侍女アゼルの二人は、唯一の手掛かりである男を探す旅へ--。

 

<評価>★★★★★

これもかなり古い小説で、中学生の時くらいに読んだ覚えがあるのですが、結構衝撃的でした。冴木忍さんが書く小説は結構牧歌的というか、わりと平和的なものが多いのですが、この星の大地だけは異色で、大人になってからも記憶に残っています。

始まりは王道ファンタジーという感じですが、主人公のアゼルは、清楚で大人しく、予知能力持ちでもあるレーンドラの王女であるサウラに仕えていましたが、ある日王女サウラが突然自殺を図ります。

からくもサウラは蘇生に成功するのですが、蘇った後には完全に性格が豹変し、粗暴な行動をとるようになり、更に記憶も消失し予知能力も消えてしまっていました。ただ一人サウラの記憶に残っている男を探して、アゼルはサウラと国を出奔して旅に出るのですが・・・。

1.2巻は割とよくあるラノベ展開なのですが、3巻で様相がガラッと変わります。途中から世界に起こる厄災からどうやって人々を助けるか、主人公たちが奮闘するのですが、非常に厳しい状況の中で主人公達が必死に頑張ってやってきたことが、人々が皆わが身のことしか考えず混乱を極める中で全て徒労に終わり、努力の結果が水の泡になるというのがかなり衝撃的です。バッドエンドの極致みたいな展開で、後味の悪い物語でもたまに言及されているのを見たことがあります。

ラストの描写が鳥肌ものというか、あの世界でアゼルはどうなっていくのか、あまりにも悲壮感が漂いますが、一種美しさも感じる凄絶な終わり方です。読了後は放心状態になるような衝撃を受けたことを覚えています。

非常に古い本で、今では中古でしか手に入らないかと思いますが、全3巻と短いので、読みやすいかと思いますので、お勧めです。