新しい君へ<三都 慎司>

<あらすじ>

妻の浮気を誤解した高校教師の佐久間悟。傷心のまま旅し、故郷・小田原でひとりの少女と出会う。不貞を働きそうになるが正気に返って再び日常へ。新年度、担任するクラスに見覚えのある姿が…。「相生亜希です はじめまして」 “あの日”の少女は魔性の魅力を携え、悟に迫る。教師と生徒、禁断の恋愛劇が開幕。

 

<評価>★★★★☆

あらすじ上は恋愛もののように見えますが、実際はウイルスによる未曽有の大災害を生き抜くためのループものです。一見高校教師である悟が主人公と思わせて、実際には亜希が主人公で、パンデミックによる死亡を何回も繰り返しており、どのようにそれを防ぐかを目指す物語となっています。

ウイルスパンデミックとそれに伴う災害が非常に悲惨な形で描かれますが、その中でもただ普通に生活することが如何に尊いことか、美しく描かれています。

最初は魔性の女として悟をもてあそぶような態度をとっていた亜希が、実は何回も死に戻りをしており、パンデミックを止めるためにあらがう姿は非常にアツいです。

出典:新しい君へ 1巻

正直全体のストーリーとしてはある程度王道といえるかもしれませんが、特に印象的なのは3巻の終わり方でした。3巻の最後の亜希の表情は、悲壮感がありますが、非常に大きな覚悟を秘めたもので、その前の悟と亜希の会話も踏まえて、異様なまでに迫力のあるものです。

3巻の後に一度作者のspecial thanksと一枚絵が描かれており、最初はてっきり3巻で終わったのかと思いました。ある意味3巻で終わっていても、素晴らしい名作であったと思います。

4巻以降はある程度王道の進行ですが、最後の終わり方は非常にすっきりするもので、今まで何十回と悲惨な最期を遂げていた亜希の思いが報われたのではないかと思われる終わり方でした。全6巻で完結済みです。