<あらすじ>
彼女を金魚としてモノにしたい――。時は大正。金魚屋であることに劣等感を抱く復一は、崖邸のお嬢様・真佐子を執拗にイジメていた。彼女を泣かせたときに抱く甘く歪んだ征服欲に、復一は夢中になっていく。しかしある日、反撃に出た真佐子によって、征服する側からされる側へと、復一は堕ちてしまう――。岡本太郎の母・岡本かの子が描いた名著『金魚撩乱』、大正耽美系サイコ・ラブが鮮やかに再誕!
<評価>★★★★☆
こちらもかの有名な岡本かの子の1937年に発表された金魚撩乱の漫画化。岡本かの子は太陽の塔で有名なかの岡本太郎(芸術は爆発だ!の人)の母ですが、かなり奔放な性格だったようで、自宅に夫を言いくるめて自分の愛人を住まわせていたほどの女傑です。その作風は、耽美かつ退廃的なものが多く、この金魚繚乱も好きな作品だったのですが、漫画化しているのは知らなかったので読んでみました。
貧しい金魚屋である復一が、金持ちのお嬢様である真佐子に拗らせまくっているのは原作と同じストーリーですが、大きく違うのは友人である日野の存在でしょう。
子供のころは真佐子をいじめていた復一ですが・・・
(完全に好きな子を虐めちゃうアレ)
中学生になって可愛くなった真佐子に偶然会い、ドキドキしてめっちゃ動揺する復一
(落ちたな・・・)
原作では真佐子の夫に関しては大きな掘り下げはありませんが、漫画版では同級生であり、富豪の息子である日野が、最終的に真佐子と結婚することになります。ただ、大筋のストーリーは原作通りで、真佐子に愛憎複雑な恋心を抱きながらも、ただ究極の金魚(ある意味自分が手に入れることが出来なかった真佐子の代わりとも言えます)を作るということに没頭する復一の葛藤が赤裸々に描写されています。
他に原作と少し異なるのは、真佐子も復一に明確な感情を持っていることが描写されている点でしょうか。原作ではそこまで感情があらわになる描写がなかった気がします。
身分の差、意地の張り合い、征服欲と非征服欲など、色々屈折した感情が入り混じりますが、最後は一応?ハッピーエンドなのかな。
原作もそこまで長くないので、お勧めです。レ・ミゼラブルもそうですが、名作の漫画化で質が良いものを見つけると本当にうれしいですね。
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