少年のアビス<峰浪りょう>

 

<あらすじ>

何もない町、変わるはずもない日々の中で、高校生の黒瀬令児は、“ただ”生きていた。家族、将来の夢、幼馴染。そのどれもが彼をこの町に縛り付けている。このまま“ただ”生きていく、そう思っていた。彼女に出会うまでは――。 生きることに希望はあるのか。この先に光はあるのか。“今”を映し出すワールドエンド・ボーイミーツガール、開幕――!!

 

<評価>★★★★★

峰浪りょう先生の本はどれも人間のエゴや陰鬱さを扱っており非常に好きなのですが(初恋ゾンビを除く)、少年のアビスはその中でも一番好きな作品です。田舎生活の閉塞感+思春期特有の心理的不安定さが相まって地獄のような雰囲気を出しているのが非常に評価+。

テーマとして心中を扱っている時点で不穏ですが、男女、親子の愛憎が非常に細やかに描写されています。主人公の令児は、認知症で介護が必要な祖母と、引きこもりで毎晩奇声を上げる兄、ただ一人の稼ぎ手で、看護助手の母の3人と貧しい暮らしを送り、変わり映えのない毎日を漠然と過ごしていますが、青江ナギという女性との出会いを気に心中を考えるようになります。

はっきり言って登場人物全員が何らかの闇を抱えており、まともな人がいないという悲惨な状況。伏線もかなり多く、色々な謎が少しずつ明らかになってきていますが、却って知らない方が良かった事実もたくさんあります。令児の名前の由来は結構泣けます。ただ、父親が誰なのか、今の時点でもはっきりはわかりません。

個人的に一番ヤバい人は主人公の母である夕子。夕子ママは登場当初は家族のことを思いやり懸命に働くお母さんという印象でしたが、徐々にその闇が明らかになります。

回想にてその過去が明らかになりますが、

 

少女時代(中学生)

出典:少年のアビス 6巻より

 

現在(4X歳)

出典:少年のアビス 13巻より

・・・何があったんでしょうね。

 

本作は現在既刊15巻で続刊中ですが、作者様のXでは今年完結する旨が告知されていました。毎週楽しみに読んでいるので、完結に向かうのは残念ですが、どんどん状況が悪くなる中で(死にそうな人が何人かいますね・・・)令児達がどこに向かうのか今後も目が離せません。

本作はドラマ化もされ、そちらは少し漫画とは異なりますが割と前向きに終わっています。北野日奈子さんが謎の美女ナギとマッチされた演技をされていたので、こちらもおすすめです。

 

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