新世界より<貴志 祐介>

 

<あらすじ>

子供たちは、大人になるために「呪力」を手に入れなければならない。一見のどかに見える学校で、子供たちは徹底的に管理されていた。
いつわりの共同体が隠しているものとは――。何も知らず育った子供たちに、悪夢が襲いかかる!

 

<評価>★★★★★

貴志祐介先生は天才だと自分は思っています。その作品の中でも、最も壮大で、かつ緻密なストーリー設定、また予想もつかない構成の小説が「新世界より」です。この小説はジャンルを一言でいうことが難しいほど、SF、恋愛、ホラー、ミステリー、ファンタジー歴史小説といったすべての要素を内包しています。人類が呪力、いわゆる超能力を持ってしまった結果どのような凄惨な歴史が繰り広げられたか、動物行動学の観点も踏まえてその対策をどのようにすることになったのか、非常に上手く練られています。

呪力を持った人間一人は旧時代の核兵器一発に匹敵する、という比喩は非常に的を射ており、それら人間同士の争いを止めるために、愧死機構(相手を呪力で殺そうとすると、自分が死ぬことになる)というメカニズムを埋め込むことは、一見合理的に見えますが、非常に歪な構造を孕んでいます。

このシステムから逸脱した業魔(意図せずに呪力が漏出してしまい、周りに悪影響を与える状態)、そして悪鬼(愧死機構が完全に破綻した状態であり、他者を超能力で容易に殺せる状態)という存在は社会に対して大きな脅威となります。さらに、人間に仕えるバケネズミという異形の存在の正体は驚くべきものであり、この社会システムが如何におぞましいものであるか、最後に判明することになります。

現代から約1000年後の未来の、異形としか思えない世界にどっぷりつかれる本小説は本当にお勧めです。初見の時は固有名詞や世界観の把握に最初は少し戸惑いましたが、読み進めると止められなくなり、徹夜で読破したことを覚えています。

こちらはアニメ化、漫画化もされており、そちらから入るのもとっつきやすいですが、一番はやはり原作から入ることをお勧めいたします。(特に漫画の方は大筋はよいのですが、かなりの改編と結構な性的描写がありちょっと面喰らいました笑)。

 

アニメのEDの割れたリンゴは名曲なのでこちらもご紹介します。

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新世界ゼロ年はまだ連載しているようですが、書籍化はいつになることやら・・・。