無限の住人<沙村 広明>

<あらすじ>父を殺し、母を攫(さら)った剣客集団『逸刀流(いっとうりゅう)』に復讐を誓う少女・浅野 凜(あさのりん)は、「百人斬り」の異名を持ち、己の身体に血仙蟲(けっせんちゅう)という虫を寄生させることで不死の肉体を持った剣士・万次(まんじ)を用心棒として雇い、逸刀流の統主である宿敵・天津影久(あのつかげひさ)を追う旅を始める――。

 

<評価>★★★★★

こちらもかなり有名どころ。一見はバトル物で、エログロの描写がところどころ見られますが、仇討、復讐の連鎖をどう止めるべきか、という大きな命題も背景に隠れています。この作品のユニークなところは、ヒロインである凛を守る用心棒であり、さらに父子の剣士である万次ですが、実際の強さとしては作中では中ほどぐらいで、万次を容易に上回る敵の剣客が多く存在している点です。万次は大体やられっ放しですが、不死の肉体を利用して時に意表を付き、何とか勝利していくのが非常に面白いです。

凛の両親の仇であり、復讐を遂げる相手である天津も、ただの悪党ではなく彼なりの信念<ただ強さのみを極める>ということがあり、互いに殺しあう(というか一方的に凜が殺そうとしますが、天津は凜を殺すつもりはあまりありませんでした。が・・・)関係でありながら、行き倒れている途中の凜が天津に助けられ、道中を二人で切り抜ける場面もあり、お互いの胸中を吐露するシーンは非常に印象的です。

更に、逸刀流統主である天津をも凌ぐ、作中最強の剣客が女性である槇絵であるのも非常に面白い設定です。全30巻で完結済みですが、強さのみを求めた天津、彼の他流統一の中で犠牲になり、復讐を誓った凜が最終的にどうなるか、是非読んでいただきたい作品です。最後にある人物と万次が手を取り合うシーンは非常に感動的です。

出典:無限の住人 12巻

ちなみに木村拓哉さん主演で実写映画化もしています。