レッドムーダン<園 沙那絵>

 

<あらすじ>

黄金の龍の如く、“後宮”を駆け上れ──。
7世紀の唐王朝。父亡き家を支えるため懸命に生きる少女・武照(後の武則天)。病気を患った母の為に奔走する武照だったが、貧困の魔の手が少女へ襲い掛かる──。
中華史上唯一の女帝・武則天の生涯を描く、中華後宮ロマン開幕──!

 

<評価>★★★★☆

国史上唯一の女帝である則天武后の生涯を描いた漫画。中国史もドイツ史と同じくらい好きですが、則天武后というと劉邦の妻呂后、清の西太后と並ぶ中国三大悪女の一人であり、自分の娘を殺し、その罪を擦り付けライバルである王氏、蕭氏を四肢を切断して酒窯の中に入れる、美青年を集めた後宮を作り色事に耽る、といった悪事が伝わっています。一方で身分問わず優秀な人材を登用し、のちに唐王朝を支える逸材も多く育てたことや、統治中に農民反乱などは怒らなかったことから、一般庶民には善政を施いていたことも示唆されています。真偽はわかりませんが、唐王朝を簒奪したということは確かなことから、非常に優秀で才気あふれていた女性であったことは間違いないでしょう。

レッドムーダンでは、貧しい生活を送っていた武照(則天武后)が、魑魅魍魎溢れる後宮に入り、どのように女帝への道を目指すかが描かれています。何も知らずに後宮に上がり、上級妃である楊淑妃の服に茶をこぼしてしまった女官を庇った武照は、のちに楊淑妃から酒宴に誘われますが、そこで見るのは酒樽に浮かんだ先の女官の首だったり、結構グロ目の描写があり、女性同士の後宮での衝突が鮮烈に描かれています。

最初は朴訥で周囲に圧倒されていたばかりであった武照が、最新話付近では付き人の女官の行動の僅かな違いに不信感を持ったり、上級妃の一人白石家に毅然と反論している点など、少しずつ後の則天武后への片鱗が見えてきているのが面白いところです。

純朴な田舎少女であった武照が、いかに中国史上唯一の女帝になりあがるのか、今後の描写が楽しみです。

出典:レッドムーダン 1巻

則天武后に関しては范冰冰(ファン・ビンビン)主演のドラマもありましたが、こちらもお勧めです。

www.bs11.jp