<あらすじ>
加勢はコンピュータ会社に勤める営業マン。口うるさいだけの上司やドジな部下に手を焼きつつも、仕事はそれなりにできる男。しかし、仕事の忙しさにかまけるうち、なんとなく家族との距離を感じてしまう今日この頃だった。ある日のこと、いつものように深夜に帰宅した加勢が疲れてベッドに横になっていると、突然見知らぬ美少女が現われる。彼女は自分のことを幽霊だと自己紹介するが…….。
<評価>★★★★★
星里もちる先生の漫画はどれもかなり好きで、昔から読んでいます。日常物としては「りびんぐげーむ」や「ルナハイツ」、サスペンス含みのインパクトでは「本気のしるし」とかが好きでしたが、総合的に一番好きなものをあげるとするとこれになるかなと思います。
妻と一人娘と暮らす加勢ですが、日常の様々なストレスに我慢しながら生活している自分に、本当に自分がハッピーなのかたまに自問自答する毎日を送っていました。そこに現れた謎の美少女幽霊、ハッピーに生きるように応援してくれますが、どこかで出会ったような気もしています。そのうちに幽霊少女と自分に大きな過去のつながりがあることを思い出しますが、その過去は非常に重いものでした。
結構構成としてはシンプルである程度話の行き先は予想もできますが、なんか星里作品にしてはちょっと珍しく、普通に不倫がそこまでネガティブな感じで描かれておりません。
幽霊少女であるすみれが部下である佐藤と仲良くなるようにけしかけるのも、倫理的にはどうなのかという気がしますが、何故かそこまで泥臭い印象はありません。若して亡くなったすみれがある種子供のような奔放な考えを持っているのは理解できますし、ただ加勢のハッピーのためを考えてある種刹那的な思考をもってしまうのはうなづけます。ただ、最終的に大人になり家庭も持った加勢が、ハッピーだけを持つのは難しいことをすみれに諭すシーンは、月並みといえば月並みですが、だからこそ心に響きます。
むしろハッピーになるためにどうするかということよりも、少年時代の初恋がどのように昇華されているかという点を描いている点で、非常に印象的な作品です。